2009年12月20日日曜日

沈黙を破れ

Hamjambo?

 先週もまたテメケの若者たちのグループを訪問し、お芝居や太鼓の練習を何度か見に行きました。というのも、週明けの月曜にテメケの若者たち向けにHIV・AIDS、「アルコール」「たばこ」などを含む薬物防止のセミナーをするので、そのセミナーの説明などもあって、いくつかのグループを訪問して忙しく過ごしました。

(テメケの住宅街を太鼓とタンバリンを叩き歌いながら進むユースグループのメンバー。結婚式前日のお祝いのために近所の人に演奏を頼まれたそうです。)
そんななか、来年に延期すると聞いていた職業訓練校の職員向けセミナーを2日後の土曜日にするという知らせを木曜日の朝に突然聞き、木曜、金曜は大慌てで打ち合わせをする羽目になりました。何でも予定通りに行かないタンザニアですが、こんなに急に予定が前倒しになるのは自分も初めてのことで、あたふたしながらセミナーの日を迎えました。
 この職業訓練校は前回も紹介した同期の自動車整備隊員が活動をしているところで、以前に彼の生徒にHIV・AIDSの話をしたことがきっかけで、今回は職員向けに話をすることを頼まれました。この職業訓練校は全国各地に分校があるのですが、そのすべての職業訓練校の職員に対するHIV・AIDSに関するポリシーが発表されました。それに伴い各校の担当者が集められ、HIV・AIDSに関するセミナーを行い、その後、その担当者が各担当校で職員対象にHIV/AIDSにセミナーを行うこととなったそうです。
今回特に力を入れているのは「差別」の問題です。HIV・AIDSの問題に対してみなの「沈黙」をやぶり、真っ向からこの問題に取り組み、HIV・AIDSのない職場を目指そうというものです。
このセミナーではまずは「差別」の問題について話をするところから始まりました。検査に行くということ自体、やはり抵抗のある人が多いという印象を受けました。ファシリテーターとなったダルエスサラーム校の担当者による熱のこもった講義と「沈黙」を破ろうという繰り返し送られるメッセージを受けて、少しずつ参加者も発言をし始めました。
私が担当したのはHIV・AIDSの基本的な知識や検査などについての講義で、日本の状況や世界の状況についても少し話をしました。感染経路の話の中で、やはり性感染が多いことからその点に関する質問を参加者に投げかけたりしながら話を進めました。でも性の話となると、大人の人もとても恥ずかしそうにして答えてくれない人も多く、「差別」のこともそうですが「性」の話についても「沈黙」を破って皆で話し合うということを強調しないといけないのだなと感じました。

(HIVウィルスの働きを抑える効果のある薬。ARV。HIV・AIDSは完治出来ませんが、こういった薬のおかげで陽性者の人も元気に過ごすことができるようになってきたそうです。)


 今回、私とともにファシリテーターとして招かれていたのは、陽性者の女性です。 彼女は区役所のHIV/AIDSの委員会に陽性者の女性代表としてメンバーに入っており、私は彼女とは区役所で知り合いになりました。彼女はポスターの被写体となったり、ラジオ番組で話をしたりした経験もあり、陽性者ということをはっきりとカミングアウトしています。今回のセミナーで職業訓練校のHIV/AIDS担当者が「差別」の問題について話が出来る人を探していたことから彼女をその担当者に紹介しました。

彼女はすでに薬の治療を始めていますが、HIVのPositiveと診断されてから10年以上元気に暮らしています。3人のお子さんのうち、末っ子の一人が陽性者だそうで、彼女はこのセミナーで自分のことを包み隠さず話してくれました。陽性ということがわかって仕事をやめさせられたことなど堂々と自分の経験を話しました。タンザニアでもまだ自分が陽性であることをカミングアウトすることが出来ない場合が多い中、彼女は積極的にセミナーなどに出かけては自分の経験を話しています。今では彼女のお家はちょっとしたクリニックのようで、たくさんの人が彼女のアドバイスをもらいに来るそうです。すぐに病院に行く勇気がなかったり、この症状はAIDSではないかと心配になったり、色々な人が彼女を頼ってくると言っていました。

(写真に写っているこの二人と私をあわせた3人で今回のセミナーのファシリテーターを務めました。)

 今回この職業訓練校のHIV/AIDSのポリシーでは、「職員がHIVの陽性者であることを理由に解雇されない。」あるいは「採用の前に検査を強要されない。」などの文言が明記されているそうです。区役所でも学校の先生でも陽性者の人が元気に仕事を続けています。これから益々こういった職場が増えていくことが期待されます。一方で日本の状況はこの点どうなっているのか逆に気になりました。

最後に、今回は色々な人と協力してこのセミナーに関わることができ、自分もよい経験ができたし、自分の持っている人脈や知識を使って少しはタンザニアの社会に貢献できたかなと感じることのできた活動でした。セミナーの最後に、その陽性者の女性のところに寄ってきて、「実は自分も陽性者なのです。」と伝えに来た人もいたそうです。それにしても、この学校の生徒にHIV/AIDSの知識を問うアンケートをさせてもらいたいと最初にお願いしたことがきっかけでこの学校と関わりをもつことになり、ついには今回のセミナーに至りました。本当に何がきっかけで活動の幅が広がるかわからないものだと思いました。

Tutaonana 

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