2009年8月29日土曜日

マペポ マカリ-悪霊のしわざ!?

Hamjambo?

 ラマダンが始まって1週間ほど経ちました。イスラムの人たちがやっている食堂などもラマダン中はお休みです。私が毎日通っていたチャイ屋さんもラマダン中一ヶ月間お休みになってしまいました。朝はその店でチャパティとバギア(豆をすりつぶしたものをまるめて油で揚げた団子のようなもの)を買って食べるのが日課だったのですが、最近は隣のお店でムトリというバナナのシチューとチャパティという組み合わせにはまっています。


(ムトリ : 料理用バナナを煮たもので、お肉入りです。これにライムと唐辛子を入れて食べるとおいしいです。主に朝食でたべる料理です。)

 さて、もう2週間ほど前になってしまいますが、配属先近くの小学校で女子生徒ばかりが集団で倒れるという事件(?)がありました。新聞やニュースなどでもとりあげられたのですが、日本人の私から見るととても不思議というか、タンザニアのよく分からない一面を見たような気がしました。

 新聞の内容や人からの話をまとめてみると、朝の9時ごろテストをしていると突然一人の女子生徒が気分が悪くなって、ぴょんぴょんジャンプをし始めると他の生徒たちも知らないうちに同じようにジャンプし出しました。そして最初の生徒が「女王」とか「王」とかわけのわからない言葉を発し、自分はこのテストを中断させるためにやってきたと言ってテストをやぶったりし、結局32人の女子生徒ばかりが次々とバタバタと倒れてわけの分からない言葉を発し続けた。だいたいこんな感じの話です。その後、ここに呪術師のような人たちが来たようで、その人たちが女の子たちの様子をみて「マペポ・マカリ(悪霊が強い)」と言い、お祈りしても元に戻すことができなかったらしいです。結局何人かは近くの大きな病院に連れられていったそうですが、医者の見解はテストのプレッシャーによる心理的なものが原因というようなものでした。

 あとで色々な人の話を聞くと、女の子ばかりがこうして倒れたりする事件がタンザニアでこれまで何度もあったそうです。ラジオ番組で、女子生徒が連れて行かれた病院の先生が話しをしていて、これは「集団ヒステリー」で特に女子生徒に多いのだと言っていました。 

 色々と理解に苦しむこの事件。職場の教育官の人たちに「私はこの女の子たちはお芝居をしていると思った。」と言うと、「お芝居のはずはない。お芝居で自傷行為や自分がケガをする可能性のあることをするはずがないじゃない。」と言われました。これまでの事件でも自分で自分を傷つけたり、倒れる時にケガをしたりした女の子たちがどうやらいたそうです。(今回はケガなどは聞いていませんが)「ふーん・・・」それ以上何もいえません。

 それで、さらによくよく色々な人に聞いてみると、ここダルエスサラームという大きな都市でも、人は病気になると病院へも行くのだけれど、今でも伝統的な呪術師、英語だとwitch doctor、スワヒリ語だとmganga(他にも部族によって色々呼び名があるらしい)という人たちのところへ行ってみてもらうようです。人によっては呪術師だけに頼る人もいるらしいし、病気の状態によって病院へ行くのと呪術師に頼るのと使い分けたり、両方に頼ったり、と様々だそうです。人にもよるけれど、結構こんな都会でも呪術師の言うことを真剣に信じている人はたくさんいるのだなというのが私の感想です。

 この呪術師の人たちに頼ることで普通はそれほど大きな問題はないように思いますが、一番大きな問題は「アルビノ」の人たちにまつわる迷信だと思います。ダルエスサラームでは色素の薄いアルビノの人たちをちょくちょく見かけますが、見た目が違うので差別の対象になったりすることもあるようです。変な迷信があって、アルビノの人に触るといいことがある、と言う人に会ったこともあります。一番問題なのは、アルビノの人の肉を食べたりするとお金持ちになれるとか、重病が治るとか呪術師の人に言われて実際大金を払って殺し屋を雇う人がいることで、これは大きな社会問題にもなっています。

 まあ、そんな話を隊員仲間でしていると、隊員の一人が自分の教えている専門学校で、「悪霊につかれたので試験を受けられませんでした。」と訴えた生徒の再試験が認められたという話をしてくれました。先生たちも半分笑っていたそうですが、そんな理由が通るんですね。まだまだ奥が深いタンザニアです。

Tutaonana

(事件の起こった学校と同じ敷地内にある職業訓練センターでライフスキルの授業をしました。事件の日にそこにいましたが、私は全く気が付きませんでした。)

2009年8月22日土曜日

「ちゃんがもと」で机を贈りました-Buza小学校

Hamjambo?

 今日から今年もまたラマダンが始まります。そして「ちゃんがもと・ちゃりてぃ・まらそん・ぷろじぇくと」を立ち上げた日からおおよそ4ヶ月、また企画の一環で参加したマラソン大会から2ヶ月が経ちました。

かなり凝縮して活動したこの4ヶ月でしたが、皆様からお預かりした寄付金で購入した机をこの度無事に小学校へ贈りました。まだ先生用の椅子の納入が済んでいませんが、一緒にこの活動をした隊員の配属先にも職業訓練校の運営のために寄付金を使って教材などの購入などを済ませました。
     (小学校低学年、1年生と2年生が共同で使う教室(2部制のため)に配置されました。全部で20個の椅子つき机を贈りました。)

隊員OGからのヒントがきっかけで始めたこの企画。タンザニア在住の日本人を中心にたくさんの理解や協力も得られ、ここまでなんとか無事にたどり着くことができました。色々な形で協力してくださった人たちに感謝感謝です。

賛同ランナー数:41名(内日本人30名、タンザニア人11名)
5km完走者:32名
21km完走者:9名
寄付賛同者および団体等:62
寄付総額:Tshs. 2,064,000

この寄付額、日本円で言えば、20万円以上になりますが、こちらの経済状況からすればかなりの大金です。学校までお金を届ける時は本当にドキドキしました。

この机を贈ったBuza小学校の校長先生、そして学校評議委員会のメンバーである先生や保護者の方たちには特に私たちの趣旨をよく理解してもらうことができたと感じます。これも一緒にマラソン大会に参加し走ったことが大きかったと思います。たくさんの日本人が自分たちの学校のために協力してくれたということが直接伝わった気がします。色々大変なこともあるけれど、「ちゃんがもと」=「チャレンジ」の気持ちでこれからも頑張ろうという話もできました。

(私たちが贈った机のすべてに学校側で「Changamoto Project」と文字を入れてくれました。)

 ここタンザニアでは毎日のように「○○国から寄付がいくらあり、○○ができました。」というようなニュースがテレビ、ラジオ、新聞で流れる国です。その中にもちろん日本もよく出てきます。ですから今でもやっぱり「日本人=お金をもっている=簡単にお金や物を寄付できる」と思っている人はたくさんいるでしょう。でも、私たちのこのプロジェクトはそうではなく、私たち二人もそれなりに努力してお金を集めたということが少しは伝わったかなと思います。同様に、一緒に企画したもう一人の隊員も彼女の配属先の人たちに彼女の頑張りが十分通じたと思います。(彼女は私と違って21km走ったのです!)

さて最後に。日本からの援助と言えば、今日の新聞にNHKの子供向け番組「ピタゴラスイッチ」50回分の番組を日本側がタンザニアの放送局に贈ったというニュースが載っていました。いろんな援助の形があるのだなと思いました。

Tutaonana

(先週、愛知県にある中部大学の学生さんと先生がBuza小学校を訪ねました。みんなでけん玉をしました。校長先生も楽しそう。子どももうまく玉が乗って盛り上がりました。)

Tutaonana

追伸:お知らせが遅くなりましたが、マラソン大会の様子を書いた文章がJICAタンザニア事務所のニュースレター「パモジャ6月号」に載りました。カラー写真も見れます!http://www.jica.go.jp/tanzania/office/others/newsletter/pdf/pamoja0907.pdf

2009年8月15日土曜日

日本の先生たちが学ぶ―小学校理科でのエイズ教育

Hamjambo?
 先週はお客さんをたくさん迎えた週でした。まずは日本の大阪から学校の先生たちがテメケを訪れました。その翌日は夏休み中という日本の大学生が、そして木曜日は、ダルエスサラーム大学からタンザニア人の先生が調査をしにきました。自分は外からのお客さんを受け入れて欲しいという依頼や、訪問したいという依頼はなるべく受けるようにし、同行したいと思っています。というのも、外からのお客さんに同行すると自分が今まで気が付かなかったことに気づかされたり、遠慮して自分はなかなか尋ねることができなかったことを尋ねてくれたりしてたくさんの発見があるからです。今回もこの3グループとも色々な発見をさせてもらいました。
(生徒代表が日本の先生をお出迎え。日本語で「おはようございます。ようこそタンザニア、ようこそテメケ、ようこそライオネスミブラニ(小学校の名前)」と言って迎えてくれました。あとは太鼓の演奏もしてくれました。)

特に日本の先生方の訪問はタンザニア人の先生方にとってもとてもよい経験になったのではないかと思いますし、準備の期間も通して私もたくさんのことを勉強することができました。日本の先生方はタンザニアでのエイズ教育の実態をお知りになりたいということだったので、テメケ区内の先生で、エイズ教育やライフスキル教育にとても熱心で勉強もよくされている方にお願いして特別模擬授業をしていただきました。
 テメケのその先生とはこれまで、エイズのことやライフスキルのことで色々話をしたことはありそういった教育にとても熱心な方という印象でした。ですが、最近は教頭という立場ですし授業はそれほどされないようで、自分も授業は見たことはなく、今回は良い機会と思ってお願いしました。HIVとAIDSの違いや病気の症状など理科の教科書を使って授業をしていただきました。授業の前には何回か打ち合わせをし、授業内容について話をしたり、日本人の先生方が少しでもスワヒリ語の授業を理解できるよう授業指導案も作成して頂き、それを私のほうで日本語に訳したりしました。
(この日は特別授業で、教科書は4年生のものを使いましたが、生徒は7年生で、よくエイズのことについても理解している印象を受けました。)

授業は先生が導入に流行りの歌を使って生徒の興味関心を集め、そのあとグループディスカッションをしたり、全体としても生徒に対する発問をもとに薦められました。言葉の理解ができなくとも、教師の一方的な授業でなく、生徒主体の授業であったことは日本の先生方にも十分通じたようです。授業の流れについてはほとんどの先生方が絶賛されていました。また生徒の授業態度もよく積極的に授業に参加しておりそれにも感銘を受けたようです。(これについてはお客さんがたくさんいたから少しいつもと違ったかもしれません。ですが発言はいつもみんな積極的です。)
授業のあとには生徒たちに日本の先生方がいくつか質問をされたのですが、その内容が印象的でした。まずは「エイズにかかったり、あるいは陽性者と言う人に身近に会ったことがありますか?」と質問をされました。正直に言うと、陽性者の方が先生の中にもいらっしゃったり、非常に身近な問題ということを普段から感じていたので、自分は尋ねるまでもないと思ったり、同時にちょっと尋ねることを躊躇していたことでした。この質問に対して何人かの生徒が手を挙げてくれましたが、やっぱり少し恐る恐る手を挙げる様子が印象的でした。「その人が誰かは言う必要がないですよ。」と伝えてやっと手を挙げてくれた感じがしました。やはり陽性者にたいする特別な見方が残っているのかなと思った瞬間でした。

(導入で、生徒の代表3人がエイズのことについて歌われているポップスを皆の前で披露してくれました。Ferooziという歌手の「Starehe(娯楽)」という歌です。U-Tubuでも見れると思います。)

それから次に印象的だったのは「友達がHIV・AIDS陽性者と打ち明けたら何と声をかけますか?」というものでした。授業は理科という教科の中で行われたので科学的な知識を教えることが中心で、心情面についてはあまり重きを置いていません。私も今回の授業について内容を話し合っている際に、自分は陽性者にたいする差別の問題についてどう教えるのか授業を見たいと言ったことがありました。ですが、教科書には載っていないということで今回は教えないという話になりました。この質問をされた日本の先生方も私と同じでそういった心情面というか差別の問題を教える授業を期待、あるいはイメージされていたように思います。この質問に対して生徒がどう答えたかというと、「病院へ行ったほうがいいよ。と言います。そうすれば長く健康に生きることができるよと言います。」とか「親切にしてあげて、愛情を持って接します。」というような答えでした。

 以前に同じテメケ区役所の地域開発課という私と別の課に派遣されていたエイズ対策員の先輩隊員がいました。彼女に「HIV・AIDS陽性者の人たちについて、タンザニアでの今一番の課題はなんですか?」と尋ねたことがあります。彼女が言うには、最近、特にダルエスサラームでは陽性であると自らカミングアウトする人が増えてきたそうです。ひとつには色々な援助や寄付を受けるには陽性であると名乗り出ないとその恩恵にあずかれないからだそうです。ですが、一方でその人にとって一番身近な人たち、家族、夫や妻、パートナーにはなかなか伝えられないことが一番の課題だと言っていました。日本の先生方と生徒のやり取りを聞きながら、その先輩隊員から聞いた話を思い出しました。

 その日の午後にはJICA専門家の方からタンザニアのエイズ問題について簡単なレクチャーがあり、私も参加させてもらいました。そのなかで、日本でもエイズのことを取り扱うには性教育と切り離すことができないため、寝た子を起こすなというような議論も一方であるという話になりました。ここ、タンザニアでもやはり性のことについてすべて包み隠さず話しをできる大人は少ないように感じます。このことについて専門家の方が紹介してくださったある若者の言葉を最後に紹介します。

「Adults are saying, we are too young to know. But we are too young to die. 」

大人は言います。私たちは知るには若すぎると。しかし私たちは死ぬには若すぎるのです。

2009年8月8日土曜日

村の小学校にソーラーパネル

Hamjambo?
 今日は8月8日でナネナネ(8はナネといいます)で祝日です。7月7日のサバサバは商売の日でしたが、ナネナネは農業の日になっています。農業が主産業のタンザニアではまずは農業をがんばろうという大統領の発言がナネナネの前にもよく聞かれました。うちの大家さんもこのナネナネに合わせて首都のドドマに長期出張中です。と言っても今年のナネナネは土曜日にあたったので私にとってはなんとなくいつもとかわらない週末でした。
 さて、少し以前の話になってしまいますが、いつもの仕事やセミナーの準備などの合間をぬって、テメケの果ての村にあるキチャンガーニ小学校に行ってきました。ここはずっと以前に一度役所の人たちと訪れたところです。あれからこの学校にソーラーパネルをつけましょうという話になり、「協力隊を育てる会」が行っている「小さなハートプロジェクト」に申請をしました。申請が通っても、小さなハートプロジェクトで申請できる金額では全部をまかないきれないのでテメケ区役所と共同で設置の予定です。
(運動場の先は遠くを見渡しても家らしきものはみあたりません。。。みんなどこから通っているのかと思ってしまいます。)

ここの学校は町の中心から約60Km離れているのですが、一応テメケ区内、ダルエスサラーム市内です。でも公共交通機関のダラダラは走っていないし、電気は通ってないし、公共の水道ももちろんありません。最寄のダラダラのバス停までも8kmぐらい離れています。新聞も買えないし情報からとても隔離されています。地方の学校でもよくあるようですが、都会育ちの先生たちが僻地に赴任しても土地に馴染めず、教員職を辞めてしまったり、病気と偽って転勤を申し出たり、本当に病気になったり。。。ということがダルエスサラーム近郊のこういった村でも起こっています。当然子どもたちの教育にも影響を与えています。

また、子どもたち自身にもこういった隔離された環境が直接的に様々な影響を与えています。先日この学校を訪れた時にはHIV・AIDSについての基本的な知識を問う質問票を用意し、6年生の生徒の答えてもらいました。これまでタンザニアではメディアの影響もあって、かなりHIV・AIDSの基本的な知識については浸透しているような印象を受けていました。特にダルエスサラームは大きな町ですし、小学校の生徒でも大多数はごくごく基本的な感染経路やHIVウィルス、AIDSという言葉の意味については知っているというのがこれまでの印象でした。ですが、このKichangani小学校の生徒たちはほとんど知らないことばかりという状態でとてもびっくりしました。学校の授業でも理科などで習っているはずなのですが、保護者も多分あまりよくわかっていなかったり、学校以外での情報量も不足しているのかもしれません。小学校を卒業して町にある中学校に行ったり働いたりする生徒もいるだろうと考えると、これはかなり深刻な問題です。
(この日は日本の人たちにタンザニアの生活の様子がわかるように絵をかいてもらいました。校長先生まで楽しそうに生徒と一緒にお絵かきを始めました。絵は協力隊を育てる会に送りました。)

 まだこの小さなハートプロジェクトで資金を調達できるかどうかはわかりませんが、ソーラーパネルを設置したらテメケ区役所で子どもたちの教育のためにテレビを購入することを約束してもらいました。どこの小学校にもテレビがあるわけではありませんから、村の小学校に優先的にテレビを設置することに合意してくれたテメケ区役所には感謝です。レターも頂きました。

 もっと頻繁にこの学校に行ければよいのですが、なんと言っても交通手段が問題です。この日も朝7時に出発し、学校に11時ごろ到着しました。しかも役所の車も使えなかったので、バスで港まで行き、フェリーで対岸に渡ってそこからまたバスで20分ほど離れた村まで行き、そこからタクシーで行きました。バスでもっと近くの村まで行けるのですが、あまり奥までいくと今度はタクシーが捕まえられません。交通費も馬鹿になりません。それにタクシーの代金もなんとなくボラれている感じですが他もいないので頼むしかありません。地方都市ではなくダルエスサラーム市内ということが余計にこの地域の問題を大きくしているような気がしてなりません。

(村に行くにはまず町から対岸にフェリーで渡ります。乗ってしまえば5分もあれば渡れる距離ですが、橋がないのでフェリーに頼っています。)
でも子どもたちはいたって元気で楽しそうでした。以前に学校を訪問してから時間が経っているにもかかわらず、私のことを憶えていてくれてとても嬉しかったです。エイズのことについてほんの少しだけ話をし、啓発用の雑誌を先生に預けてきました。この学校のことを一緒に活動しているライフスキルのトレーナーにも話しをしたら、是非行ってみたいと言っていました。本当に一緒に行ってライフスキルの授業ができたらいいなと思います。タンザニア人でもダルエスサラームの都市部に住んでいると村に行ったことがない人もたくさんいます。タンザニア人にもこの問題についてもっと知ってもらいたいと思います。

Tutaonana

「協力隊を育てる会」 http://www.sojocv.or.jp/

2009年8月2日日曜日

ひとつのハードル越え

Hamjambo?

 日本はもう一学期が終わって夏休みなんですよね。こちらは一年で一番涼しい季節がやってきました。朝夕はちょっと肌寒く感じます。でも日本ならそんなに寒いとは思わないでしょうが、体の体感温度がタンザニア仕様になっているのかもしれません。

 先週は同期隊員が活動している職業訓練校で「ライフスキル」の授業をさせてもらいました。実は今まで「ライフスキル」の授業に関しては特に、タンザニア人の先生たちに全面的に前に出てもらって自分は裏方に回っていました。ところが、同期隊員の学校でエイズや薬物についてのアンケート調査をさせてもらったことをきっかけに、「たまには違う人の授業を見て勉強したいし、先生によっても視点や教え方が異なるから授業をしてみて」みたいなことを言われ、授業をやることになりました。これははっきり言ってかなり自分としても緊張し、ハードルが高いものでした。理由のひとつはもちろん言葉の問題。もうひとつは、日本でも性教育やエイズ教育の授業を一人でやったことはなかったからです。それに、生徒の疑問もたくさんあって、質問も出ることが予想されるし、本当に不安でした。でも先生方も「言葉がわからない時は助けるから。」と言ってくれ、当日に至ったというわけです。
 
 ここの学校、これまで訪れたどの学校よりも設備がよく、プロジェクターとコンピューター、パワーポイントも使えたのも大変助けになりました。この学校のライフスキル担当の先生も自分でパワーポイントを作ってよく授業をされているようでした。

 (生徒は自動車整備コースと秘書コースから。生徒も大勢なのでマイクも用意してもらいました。)

 1時間程度ということでしたが、お願いされた内容が多岐にわたっていたので「あまり深くは入れないからあとで補足してくださいね」とあらかじめお願いし、20枚程度のスライドで「性とセクシュアリティ」「性感染症」「HIV・AIDS」「HIV・AIDSとともに生きる人」ということで話をしました。
 授業はスライドの助けもあり、なんとか私が言いたいことは理解してもらえたように感じます。色々と感じるところがありましたが、生徒が積極的に授業に参加してくれたことと先生方も協力的で助かりました。途中でちょっとだけロールプレイを入れたのですが、積極的に挙手して前でやってくれる生徒もいました。ちなみに、最初は私と同期隊員で見本を見せ、それとまあ同じようなことをしてもらいました。内容はといういと。。。

女子生徒「あなたのことが好きだけど。私まだ気持ちの準備ができてないの。」
男子生徒「大丈夫だよ。ぼくは君のことを待っているよ。」
、、、てな会話です。

             (積極的に男女1名ずつの生徒が前に出てきてくれました。)

 ここの含まれるメッセージは「勇気を出してNoと言いましょう」「信頼し合っているなら待ちましょう」ということなんですが、「ぼくは君のことを待つよ。」っていいましょうね!と投げかけた時の男子生徒の全体の反応がなんとなく微妙でしたねぇ。実際は待たずにすぐ別の人のところへ行ってしまうような気もしないでもありません。
 
 あと、調査した時もそうですが、よくわかっている生徒とそうでない生徒の差が大きいことがよくわかりました。「AIDSウィルス」はどこにいますか?と質問したら「人間の皮膚」と答えた生徒がいてびっくりしました。他の生徒もちょっとびっくりしていましたが。生徒の質問に対してよく理解している別の生徒が答えてくれる場面もありました。

 それから性感染症の予防について、よくあるABC(A=Abstain(待つ)、B=Be faithful(誠実であれ))の話をし、C(Condomを使いましょう)のことはそう深く入らずに済ますつもりでしたが、実物のコンドームをちょっと見せたら「使いか方を説明してくれないと予防できません」的な発言でコンドームの説明会がはじまりはじまり。。。これもよく知っている生徒が前に出て説明を始めました。そして先生方も「女性用コンドームもあるのよ~」と実物を持ってきてくださいました。
 
これまで自分が一緒に活動してきた団体は主にカトリック系だったので、青少年にたいして予防に「コンドームを使いましょう」という選択肢は入れていないので、使い方の話になることはまずありません。これもまあ議論の分かれるところです。さらに、タンザニアではコンドームにエイズウィルスがいるというようなデマが流れたことがあったり、コンドーム会社の商業主義のわなにかかっているという風に言う人たちもいます。一緒に活動しているカトリック系の人たちの意図や目指すところをきいて納得するし、同意もできるのですが、一方で全く教えないというのも非現実的だし限界があるような気もしています。

 今回の授業を通して、今後、自分としてどんな立場をとっていくのかについても色々考える機会になったと思います。最後に先生と、お互いが授業で使ったスライドの交換をしました。お互い学びあうということができ、とてもよい経験になりました。

 それにしても、それにしても。もしかしたらこれが最初で最後の一人でやるライフスキルの授業かもしれません。

Tutaonana