ラマダンが始まって1週間ほど経ちました。イスラムの人たちがやっている食堂などもラマダン中はお休みです。私が毎日通っていたチャイ屋さんもラマダン中一ヶ月間お休みになってしまいました。朝はその店でチャパティとバギア(豆をすりつぶしたものをまるめて油で揚げた団子のようなもの)を買って食べるのが日課だったのですが、最近は隣のお店でムトリというバナナのシチューとチャパティという組み合わせにはまっています。
(ムトリ : 料理用バナナを煮たもので、お肉入りです。これにライムと唐辛子を入れて食べるとおいしいです。主に朝食でたべる料理です。)
さて、もう2週間ほど前になってしまいますが、配属先近くの小学校で女子生徒ばかりが集団で倒れるという事件(?)がありました。新聞やニュースなどでもとりあげられたのですが、日本人の私から見るととても不思議というか、タンザニアのよく分からない一面を見たような気がしました。
新聞の内容や人からの話をまとめてみると、朝の9時ごろテストをしていると突然一人の女子生徒が気分が悪くなって、ぴょんぴょんジャンプをし始めると他の生徒たちも知らないうちに同じようにジャンプし出しました。そして最初の生徒が「女王」とか「王」とかわけのわからない言葉を発し、自分はこのテストを中断させるためにやってきたと言ってテストをやぶったりし、結局32人の女子生徒ばかりが次々とバタバタと倒れてわけの分からない言葉を発し続けた。だいたいこんな感じの話です。その後、ここに呪術師のような人たちが来たようで、その人たちが女の子たちの様子をみて「マペポ・マカリ(悪霊が強い)」と言い、お祈りしても元に戻すことができなかったらしいです。結局何人かは近くの大きな病院に連れられていったそうですが、医者の見解はテストのプレッシャーによる心理的なものが原因というようなものでした。
あとで色々な人の話を聞くと、女の子ばかりがこうして倒れたりする事件がタンザニアでこれまで何度もあったそうです。ラジオ番組で、女子生徒が連れて行かれた病院の先生が話しをしていて、これは「集団ヒステリー」で特に女子生徒に多いのだと言っていました。
色々と理解に苦しむこの事件。職場の教育官の人たちに「私はこの女の子たちはお芝居をしていると思った。」と言うと、「お芝居のはずはない。お芝居で自傷行為や自分がケガをする可能性のあることをするはずがないじゃない。」と言われました。これまでの事件でも自分で自分を傷つけたり、倒れる時にケガをしたりした女の子たちがどうやらいたそうです。(今回はケガなどは聞いていませんが)「ふーん・・・」それ以上何もいえません。
それで、さらによくよく色々な人に聞いてみると、ここダルエスサラームという大きな都市でも、人は病気になると病院へも行くのだけれど、今でも伝統的な呪術師、英語だとwitch doctor、スワヒリ語だとmganga(他にも部族によって色々呼び名があるらしい)という人たちのところへ行ってみてもらうようです。人によっては呪術師だけに頼る人もいるらしいし、病気の状態によって病院へ行くのと呪術師に頼るのと使い分けたり、両方に頼ったり、と様々だそうです。人にもよるけれど、結構こんな都会でも呪術師の言うことを真剣に信じている人はたくさんいるのだなというのが私の感想です。
この呪術師の人たちに頼ることで普通はそれほど大きな問題はないように思いますが、一番大きな問題は「アルビノ」の人たちにまつわる迷信だと思います。ダルエスサラームでは色素の薄いアルビノの人たちをちょくちょく見かけますが、見た目が違うので差別の対象になったりすることもあるようです。変な迷信があって、アルビノの人に触るといいことがある、と言う人に会ったこともあります。一番問題なのは、アルビノの人の肉を食べたりするとお金持ちになれるとか、重病が治るとか呪術師の人に言われて実際大金を払って殺し屋を雇う人がいることで、これは大きな社会問題にもなっています。
まあ、そんな話を隊員仲間でしていると、隊員の一人が自分の教えている専門学校で、「悪霊につかれたので試験を受けられませんでした。」と訴えた生徒の再試験が認められたという話をしてくれました。先生たちも半分笑っていたそうですが、そんな理由が通るんですね。まだまだ奥が深いタンザニアです。
Tutaonana
(事件の起こった学校と同じ敷地内にある職業訓練センターでライフスキルの授業をしました。事件の日にそこにいましたが、私は全く気が付きませんでした。)