2010年2月18日木曜日

ドドマでのワークショップ:「環境」を考える

Hamjambo?

先週の木曜日からザンジバルとドドマに行ってきました。一度ダルエスにも戻ってきましたが、おおよそ一週間出歩いていました。ザンジバルでは毎年開かれる音楽祭を見てきました。去年は日程が合わず行けなかったのですが、今年はもう最後なので思い切って見に行ってきましたが本当に楽しかったです。タンザニア、ザンジバルなど地元のアーティストだけでなくアフリカ各国、またアメリカ、ヨーロッパ、日本からもアーティストが参加する国際的な音楽祭で、今年で7回目の開催となります。最近ではザンジバルの観光の目玉となりつつあります。
(ザンジバルのOld Fortが会場です。この中の広場で野外コンサートが行われました。)

 音楽祭は一週間近く続くのですが、私たちは土曜日にザンジバルを発ち、日曜にタンザニアの首都ドドマへ移動しました。ダルエスサラームがタンザニアでは一番大きな都市ですが、地理的に中心地ということもあったのかドドマがこの国の首都に指定だれており、国会があると、大統領をはじめ国会議員や役人の多くもダルエスからドドマに大移動します。

 さて、今回のドドマ訪問は協力隊員が主催のTeaching Workshopが開かれたためです。他の国もそうですが、ここタンザニアでも理数科教師という職種の隊員が多く派遣されています。タンザニアではこういった理数科教師隊員が中心となって「タンザニア教育研究会(略してタン教研)」という部会を運営しており、主に中等学校の生徒への奨学金、教授法の交流や中等学校の国家試験対策研究を中心に、タンザニアの生徒の学力向上のため活動しています。この「タン教研」には他の職種で教師として働いている隊員や、私のように教育に関係する隊員なども参加しています。

 今回のテーマは「環境」ということで、様々な職種の隊員やタンザニア人教師も参加しました。ワークショップではテーマに沿った模擬授業を日本人、タンザニア人が行い、見学者と授業者が授業後に授業評価を行うというものです。残念ながら全部の授業を見ることはできませんでしたが、自動車整備隊員が排気ガスの少ないエコカーの話をしたり、数列と自然界の関係を説明した理数科隊員がいたり、とても興味深く参加させてもらいました。
(タンザニア人の同僚と一緒に授業をした理数科隊員)

 私もちょっと「環境」というテーマに沿うには無理もありましたが、ライフスキルの授業のなかから「人生の見通しと目標設定」という授業をさせてもらいました。これは、12月の青少年セミナーで取り上げたトピックで好評だったことから、他の隊員の薦めもあり、このトピックをドドマワークショップ用に選びました。前回のセミナーでは私自身はこのトピックを直接教えなかったので、初挑戦で少々心配でしたが生徒も協力的でとても楽しく授業ができ、大方満足できました。生徒には10年後、6年後、4年後の目標と今年の目標、それに毎日何を頑張るかをワークシートに書いてもらいました。なりたい職業では「医者」「弁護士」「教師」「新聞記者」「エンジニア」「サッカー選手」「秘書」「ドドマの県知事」などなど、結構それぞれの目標を考えて書いてくれました。毎日頑張ることでは「理数系の科目を特にがんばり、毎日2時間勉強する。」とか「自習クラブを作って勉強する」「クラスで一番を取る」というような目標を書いてくれた生徒もいました。授業の中で出来るだけ具体的に、達成可能でかつ達成出来たか出来なかったかわかるような書き方をするように伝えたので、多くの生徒が具体的に目標を書いてくれました。

 他の隊員の授業で特に印象的だったのは、同僚の先生と協力して「フィボナッチ数列」について自然界の花、かたつむり、木などと関係させて説明した理数科教員の授業でした。私は高校の時以来数学には全く触れる機会もなくあまり興味もない人なのですが、この授業はとても興味深く聞かせてもらいました。花びらの数、木の枝の分かれ方、かたつむりの渦巻きはこの数列に沿っているという授業で、この授業を聞いた生徒はきっとこの話を忘れないだろうと思いました。
(グループ活動で、各グループには外で採った花が配られました。実際に花びらの数を数えて数列に合っているか、たしかめます。)

その他、全体で行うアクティビティーでは「モリンガ」という木の種を使った水の浄化実験、ソーラークッカーの設置などを行いました。「モリンガ」という木はミラクルトゥリーだと聞いたことがありましたが、今回初めてその使い方を目の前で見せてもらいびっくりしました。種を粉状にしてそれを汚れた水に入れると、おおよそ30分から1時間でバクテリア等が沈殿してきれいで透明な水になりました。それを沸騰させる、あるいは日光に当てておけば飲料水にもなるそうです。また粉を食事に混ぜると、お腹の中の悪いバクテリアなども死ぬということでした。
(右がモリンガの種の粉を入れて30分経った水。左はもとの汚れた水です。)
(これがモリンガの木の種です。薄皮と殻をとってそれを粉状にして、汚れた水の中に入れると。。。)

これまで理数科教科に限ってしかワークショップが行われていなかったので、自分は初めてこのワークショップに参加しましたが、とても興味深く勉強になりました。また今回自分は参加するだけでしたが、こういった大きなセミナーを開催するにあたって中心となってくれた隊員の人たちに対して感謝の気持ちで一杯です。特に、同期のドドマ隊員は自分の学校でこのセミナーを開催したので本当に大変だったと思いますが、おかげで彼女の学校も見れたし生徒や同僚にも会え、頑張っている様子が伺えました。これで帰国前にダルから遠出をするのも本当に最後かもしれません。
Tutaonana

2010年2月8日月曜日

木を植える人

Hamjambo?
帰国前の土日もあと数えるほどになりました。じっとしているのがもったいなくて、結局今週の週末もちょこちょこと出かけたりして忙しく過ごすことになりました。土曜日は買い物の後に同期隊員の家を訪問し、地元でサッカーの試合を観戦。日曜日の今日は以前に訪問すると約束していたグループのところに行ってきました。

 今日訪れたグループは”Shirikisho key stone”というグループで主に地域で植林をしています。グループと言っても、見た感じ、軍を退職したおじいさんがほぼ一人でやっているようです。私の好きな本で『木を植える人』という話がありますが、これは一人で見返りやお金などとは関係なく荒地に木を植える続ける男のお話で、それを思い出させるような方でした。

(森の前で。向かって左が「木を植える人」。真ん中が私で右隣はこの地域で青少年のための活動をしている友達。二人とも地域のために働くことに熱心で優秀な人たちです。)
 
 テメケの小学校はどこも木が植えてあったりして日差しの強いタンザニアにあって涼しげで緑豊かな学校の環境を作り出しています。また、よく通る広場にも木が植えてあって人々が木陰で休むことの出来る空間を作り出しています。なんとこういった場所のいくつかはこのおじいさんがなさったお仕事の結果でした。

 今日は、荒地で土壌浸食の激しかった土地に植林をし、今は森となっている場所を見学してきました。こちらの木は育つのがとても早いものもあるようで、10年ぐらいで大きな立派な木に成長するようです。元々は政府の住宅が70ほど建っていたのですが、建物が壊れ、土壌の侵食が激しく荒地となったその場所に木を植える仕事をそのおじいさんがすることになったそうです。今では大きな木がたくさんあってまさに森となっていました。ただ残念なことには、住民が捨てるごみがひどくなっていて、住宅の脇は木が枯れかけていました。
(壊れた住宅。こんな壊れた家が70棟もあったそうですが、今ではほとんどその面影はなく、森に生まれ変わっています。)

(森の一番端。住宅地との境目には住民の捨てるゴミが溢れていました。残念)

 事務所への帰り道も「これも私が植えた木だ。」という言葉を何度も聞きながら歩きました。木の種類などもわからないけど尋ねたりしておしゃべりしながら民家の間を歩きました。途中で「たくさん種類がある中でどうしてこの木を選んだのですか?」と私が尋ねると、「これはいい木陰ができるんだ。」という答えが返ってきました。この人らしい答えのように感じました。
このおじいさんは昔軍隊に所属していて、ウガンダと戦争した時にも参戦していたそうです。その後、軍を退職し、木や自然のことが好きだったこともあったのかダルエスサラーム大学でその分野の勉強をしたそうです。今でも自分のお金を使って植林を続けていらっしゃることも多いようですが、今まで数々の場所の植林をされてきたということです。
彼の業績がすばらしいということで、一度副首相が彼のオフィスを訪ねたこともあったそうです。その時に副首相から「何が必要ですか?必要なものを言ってください。」という申し出があったにもかかわらず、このおじいさんは本当に必要な道具をちょっとだけお願いしただけでほとんど何も欲しいと言わなかったそうです。せっかくの機会に彼のお願いがあまりにも慎ましかったので、周りの人がそれを聞いて笑っていたということでした。
(この場所も10年ぐらい前までは何もない荒地だったということです。)

タンザニアに来て、こういった自然環境問題に取り組んでいる人に出会ったことがほとんど無かったので今日の訪問はとても新鮮でした。この方がいなかったらあそこの木もここの森もなかったのかと思うと、本当に貴重なお仕事をされている人だなと思いました。まだタンザニアではこういった自然環境保護に関心のある人が少ないようにも思います。タンザニアは益々経済的にも発展していくでしょうが、ゴミ問題や自然環境破壊などの問題にも取り組んでいかないと将来大変なことになるのではと心配でもあります。
Tutaonana

2010年2月2日火曜日

我心ここに残す-薬物のこと

Hamjambo?
 この週末は日帰りでダルエスサラームからバスで1時間半ほどにある町、バガモヨに行ってきました。先輩隊員の方が週末に孤児院で自分の活動以外でボランティア活動をしておりそれを見に行くのが主な目的でしたが、少ないながらも見所もあるのでそれも楽しんできました。バガモヨという地名は、奴隷となった人が船で連れ出される時に「バガモヨ!(我心ここに残す)」と言ったことでついた名前だと聞いています。そういった奴隷貿易やアラブとの交易の歴史をたどることのできる遺跡があり、また有名な芸術大学があってタンザニアはもとより世界中から学生が集まっていることもあり、現在では小さいながらも独自の文化を築いている町としてたくさんの人が訪れているようです。
(13世紀のアラブ人が建てた思われるモスクとお墓の遺跡)
(芸術大学内にあるステージ。大学ではダンス、音楽、アクロバットや絵画、芝居、舞台監督などなど様々なコースがあります。毎年9月の音楽祭にはタンザニア中からアーティストが集まるそうです。)

 さて、先日は職業訓練校での今年2回目のライフスキルの授業に行ってきました。この職業訓練校ではDon Boscoというキリスト教系の団体の人に以前から授業をしてもらっていますが、先日は私が最近仲良くなった青少年グループの青年をこの人に紹介しました。この日は薬物の授業ということでその青年が持ってきてくれたDVDを見ました。彼は以前、薬物を使用していたのですが今ではすっかり薬物使用を止め、ボランティアで他の人のカウンセリングや啓発活動をしています。
(小さなテレビを借りました。ここの教室は電気がないので隣の建物から長いコードで電気を引きました)
(皆教室の床に座ってテレビを真剣に見ます。生徒は200人近くいたのではないでしょうか)

 任期もあとわずかとなった今頃になって、改めてタンザニアにおける薬物乱用の状況の深刻さを感じています。日本と同じでお酒とタバコは成人ならば合法ですが、大麻、ヘロイン、コカインなど他の薬物はもちろん非合法です。お酒を無許可で作る事ももちろん禁じられています。それにも関わらず、特に大麻の使用にいたっては法律があってもほとんど機能していないのではないかと感じます。ある時、青少年向けの啓発テレビ番組で、大麻の使用者はもちろんのこと、へロインやコカインなどの使用者が堂々とテレビに出て自分の腕に注射を打っているところが放映されているのを見て本当にびっくりしました。

 12月に行った青少年向けセミナーで「薬物」というコマをもうけて自分も話しをしましたが、一般的に若い人たちの間でたばこやアルコールも含め、薬物の健康への影響などはあまり理解されていないようにも感じます。あまり深く考えず小さい時から薬物使用を始めてしまう例もあると聞いています。小学校の高学年、7年生でも大麻を吸っている子が少数ながら存在するという話も先生などから聞いたこともあります。青少年セミナーの参加者の身近にも薬物の売人の友達がいたり、「草」を育てている人がいたり、吸っている人がいたり、以前に吸っていた参加者がいたり。警察官でも吸っている人がいるという話を耳にしたり。日本だったらありえない状況ですが、本人たちはその状況に結構慣れてしまっているような気もしました。
(先日テレビで放送されていました。元薬物使用者も出ていましたが、現在使用中の人もこんな姿も見せていて。。。いいのかしらとこちらが心配になります。)

 
 残りの任期で何ができるか、ということで始めたのが薬物についての詳しいパンフレットを作成しイベント等で人が集まる時や色々な団体や学校を訪れたりする時に配ることです。HIV/AIDSのパンフレットは種類も豊富ですが、薬物関連は限られているため少しでも啓発に役立ててもらいたいと思って作成しました。セミナー用に一応作ったのですが、セミナー後にカウンセリングを行っている団体の人の連絡先なども載せ、改良して大量に印刷しました。
 実は、自分の前任者が青少年グループと協力して以前作った薬物のパンフレットがあり、今回それも参考にさせてもらいました。それをきっかけに、これまであまり訪れていなかった前任ボランティアが活動パートナーとしていた青少年グループにも数回訪れました。このグループはTAYOHAGと言い薬物のカウンセリングを行ったりしているグループで、職業訓練校で今回話をしてくれた青年のグループです。

今回、自分の任期中にTAYOHAGの青年をDon Boscoのライフスキルプログラムのファシリテーターに今回紹介することができ嬉しく思いました。また、TAYOHAGの青年も出来る限りライフスキルの授業を見に来ると言ってくれています。Don Boscoが学校でのライフスキルの教育プログラムを今年の6月に終了することになっておりその後が少々心配となっていましたが、この青年と職業訓練校の先生とも今後協力していってくれそうです。

 さて、この国を去る前にこのパンフレットの電子データもいくつかのグループや団体に残そうと思っています。「我心ここに残す」。。。とは思っていますが、実際何を残せたのか。実際は自分がタンザニアからもらって帰ることのほうが多そうですが。
Tutaonana